人と人とをつなげ、暮らす千葉県船橋市・福井さん
約34坪/4人暮らし
設計:伊礼智設計室施工:株式会社田中工務店

Credit : Writer きづき編集部 Photo 本多元、一部福井さんご提供及びきづき編集部
From : きづきvol.35「ら・くらす」

日々の営みに宿る、暮らしの色。OMの家で暮らす方々にフォーカスし、それぞれの家づくりや暮らしぶりをうかがいました。そこにはおどろくほど多様で、あたたかなストーリーがありました。

“生活の拠点”に留まらない、人と人とをつなぐ場所

マイホームを持つことが、万人にとっての理想とはならない現代。家族が食事をし休息をとる場所、という機能面にフォーカスすると、共同住宅だったり、マンションだったり、はたまた極端ではありますが車で生活する、という選択もあります。とはいえ、家づくりが地域とつながるきっかけとなり、その後、コミュニティの輪が広がったり、住まい手にとって好きなことが思う存分楽しめる場所となったなら、家は、家族と共に成長し、変化するかけがえのないものとなるでしょう。

千葉県船橋市、高品質な街をと開発された住宅地の一角にある、OMソーラーの住まい手である福井さんを訪ねました。奥さまのリハルさんは、アトリエ・イド(以下イド)という衣食住に関わるさまざまな教室やワークショップを主宰されている活動的な女性です。竣工から8年経つご自宅は、家族の居場所に留まらず、人と人をつなぎ新しいことが生まれる場所に育っています。福井さんご夫妻へ暮らしぶりをお伺いしました。

OMソーラー(以下、O):リハルさん、家を建てようと思われたきっかけを教えてください。

福井家(以下、F):実は私はマンション暮らしでもいいかなと思っていました。家は決して安いものではないし、中古マンションのリノベーション(*1)が身の丈にあっていると思っていたくらいです。(笑)

O:え!?意外です。リハルさんにとって、この家は活動の拠点となってますし、家の雰囲気もリハルさんにぴったりな感じなのですが。

F:インテリアコーディネーターだったので内装には詳しいんですが、一戸建てに暮らした経験がなかったので、家づくりは夫の方が思い入れが強かったと思います。OMソーラーについても夫から聞いて知りました。今や、この家が自宅でのニット教室にオープンな雰囲気を与えてくれているので、私が一番恩恵を受けているかもしれないです。

O:暮らす中で、冬の床暖房やお湯採りなど、気に入っているOMソーラーの働きがあれば教えてください。

F:エアコンの効いた気密性の高い部屋が苦手なんですが、この、空気が動いている感じが好きです。

O:窓などを閉め切っても空気が動いている感じということですか?

F:そうですね。そのおかげで、布団は頻繁に干さなくても快適ですし、マンションでは悩みの種だった結露も皆無で、ズボラなわたしにぴったりなんです。窓を開けたり閉めたりの換気もほとんど意識することなく暮らしています。

O:太陽熱で暖房し続けてますから、暖かい空気が逃げることも気にしなくて過ごせますね。もうひとつ聞かせてください。家を建ててよかったというエピソードはありますか?

F:はい、たくさん!例えば自宅の南側にミニトマトを植えていたんですが「たくさん実ってるわね」という声が聞こえてきたので、デッキから声をかけたんです。「どうぞお持ちください」って。お母さまと娘さん息子さんのステキな親子連れだったのですが、その後、お母さまには味噌づくりを、染色家の息子さんには草木染めを、それぞれ定期的に教えていただくことになり、イドのはじまりにお力添えいただきました。娘さんは鎌倉でご活躍の庭師さんで、庭の紅葉も手入れをしてもらったりと…引っ越してきたばかりで知り合いのいない私に、この家がご縁を運んで来てくれたと思いました。

Oイドの活動については後ほどもう少しお伺いさせてください。その前に、ご主人、家づくりのきっかけをお話いただけますか。

F:自分の育った環境では、いつか老後を過ごせる家を建てるというのは自然でした。ちょうど長女が小学校にあがるタイミングで、調べはじめたのがきっかけです。建築家の伊礼さんの存在を知り、OMソーラーのことは伊礼さんの建築事例を見て知りました。

O:かつての雑木の雰囲気が残る公園が南側に広がり、とても気持ちのいい場所ですね。

F:家づくりの相談に伊礼さんを訪ねたとき、地形から家の設計が決まると聞いて、この土地の購入を決心したんです。その後、伊礼さんにプランをしていただきましたが、住宅模型をみた瞬間とても気に入りました。夏と冬の日射も考えられていて、冬はちゃんとリビングに日が差し込むんです。

O:冬は2階から1階へ陽射が降り注ぎ、夏は公園からの涼しい風が入って、吹き抜けから抜けていくように設計されていますね。引き続きご主人にお伺いします。冬の雨の日など、OMソーラーの太陽熱で暖房できない日はどうしていますか。

F:そんな日は太陽のありがたみを感じながら(笑)、アラジンストーブ(*2)を使っています。薪ストーブの設置も考えましたが、狭くなるのと、夏は見たくないな、と思ってやめました。

O:限られた条件の中で必要なものを選びとり暮らされている様子が伝わってきます。 ところで、先ほど少しお話いただいたイドの活動について、リハルさん、教えてください。

F:今風に言えば、いわゆる「サードプレイス(*3)」を地域に作りたかったんです。学校でも会社でもない。家族でもない、しがらみのゆるい場所。でも深い信頼に結ばれた斜めの関係を生み出したくて、ニット教室を中心に据えてスタートしました。
「手を動かしながらのお喋り」って、不思議と心を整えてくれるように思います。それを私は「イド端会議」と呼んでいるのですが…、実はイドには”I do.”という裏の意味もあって、自ら動く私たちでありたい、という願いも込められているんですよ。
実は産後、子どもの通院や手術が長期間続いた時期があり、当時あまりに楽しい会社に勤めていたので、逆に仕事を休むことがストレスになってしまって。通院しながらでもしっかりコミットできる仕事をしたいな、と思ったとき、自宅教室は魅力的でした。

*1:中古物件など既存の建物の大規模な改修を行い、機能性やデザイン性を向上させること。リフォームが機能の回復を主としているのに対し、リノベーションはプラスαの価値を高めることを目的とする。

*2:英国アラジン社の製品で、独特の存在感、レトロなデザインが人気の石油ストーブ。高い信頼性と熱効率で約80年にわたり、基本的な構成を変えずに生産されている。

*3:生活を営む自宅(ファーストプレイス)や職場(セカンドプレイス)とは別の心地のよい第三の居場所。創造的な交流が生まれるコミュニティの核となり、都市生活者の多い現代社会において重要なスペースとされる。

キッチンはコの字につくりつけられている。ささっと3品調理する手際の良さもさすがです。


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  1. 部活や友達づきあいで、休日でさえもほぼ家族が揃うことがないという福井さんご一家、珍しく全員揃った記念に。
  2. 千客万来な福井さんの家の玄関。バッグやコートをかけるフックは施工を担った田中工務店に手作りしてもらったという。
  3. リハルさんが週一で手伝っている有機無農薬を貫く山田農場、多品種の野菜はもちろん、合鴨農法でお米と同時に肉を生産しているのが自慢。山田農場のクラウドファンディングを昨年企画して「小さな寄付や買い物でも、それを通して、地域に眠る幸せな関係を見える化してくれるすばらしいシステムだと気づいた」というリハルさん。
  4. 食卓を彩る野菜も山田農場のもの。「野菜はみんな皮がおいしい、だから剥かずに使うといいのよ、山田農場なら安心。」「大根・生ハムと交互に挟んだら、しばらく置くと塩気でしっとりして味が馴染むの。」もてなし上手。

豊かに暮らすヒント満載、広がり続ける“マイホーム”

ニット教室から始まったイドは、その後ご近所さんとの出会いを後押しに始まった味噌づくり「イド・ミソ」、草木染め「イド・ゾメ」等のワークショップ、今では子どもが自分でできる力を見守るワークショップ「いどっ子」、かご編みの教室「押忍!イドかご部」など、自宅では収まりきらないほど活動の幅が広がりつつあります。

さらに、有機無農薬で野菜作りをする「山田農場」との関わりや、千葉県佐倉市で生まれた良質なクラフトフェア「にわのわ」の立ち上げなど、地域との関わりをますます深めているリハルさん。

「サードプレイスをつくること」は、一見敷居が高く感じられますが、コミュニティーが希薄になりがちな現代社会において、例えば、安全な食事を家族に食べさせたい、さまざまな悩みを持つ母同士励まし合いたい、こどもの自立心を伸ばしたい、といった、子を育てる母ならではの気持ちが原動力となっているのだと解ります。

「多忙な中でも大切なことや楽しいと感じることに時間を使う」、「限られた空間に必要なものを配置する」、ご夫妻のお話から、快適に暮らすヒントを伺うことができました。2人のお子さんの成長とともに福井さんご一家の暮らしも変化しつづけることでしょう。

今、リハルさんの一押しの手仕事に「ダーニング」があります。ダーニングとは衣類の虫食い穴や引っ掛け穴にシミを補修する針仕事のことをいうのですが、例えば靴下。「どうせ穴があいてしまうのだから」と適当に選んでいませんか?たとえ穴があいてしまっても素敵に繕うことができれば、お気に入りの靴下を大切に長く履けるし、もっと愛着のある一足になるんです。

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  1. この日は「かご部」開催日。予約で満席だった。教室が始まるとスパルタになるとリハルさんは自ら語る。手作りとその仲間への愛情があるからこそ。
  2. 大人気のフェルト帽子「パオ」。ウールやリネンで作る衣類や小物も人気。昨年につづき、この4月にも東武百貨店船橋店にて「船橋の作家」として1週間出店予定。
  3. 「子育て中の細切れの自分時間でも、さっと編めて達成感を得られるのが編み物の素敵なところ」と、細かな模様もさくっと編み進む。
アトリエ・イド
アトリエ・イド

アトリエ・イド

福井さんが自宅を開放し、地域の方々と企画・運営する「ものづくりを通した場づくり」のユニット。「編みフェルト」の作品づくりを中心に、味噌づくり「イド・ミソ」、草木染め「イド・ゾメ」、子どもの自主性を育てる「いどっ子」、かご編みの教室「押忍!イドかご部」、手しごとの合間のちょっと特別なお弁当「美味しい時間」など、自宅では収まりきらないほど活動の幅が広がりつつある。一連の営みを通し、「もの」「お金」「気持ち」の流れを整える場所になるよう活動中。

イベントも随時開催しています。
詳しくはfacebookページをご覧ください。

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